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地質構造や熱源と温泉成分の関係

 [1]地質構造による温泉タイプの分類

温泉の成分組成は、その地域の地質や土壌などの地理的条件に強く影響されています。
温泉水が地中を流れる過程で周囲の岩石や土壌から様々な成分を溶解することで、多様な泉質が形成されます。マグマのガス成分や熱水溶液が混入したり、流動中に岩石の成分を溶解することで、温泉の様々な泉質が形成されると考えられています。
地質構造によって温泉は主に以下のように分類されます。

①火山性温泉:

  • 火山地域に多く見られる
  • 温度が高い(40°C以上)
  • 硫黄泉など特徴的な泉質が多い
  • 湧出量が多い傾向がある

②深層熱水型温泉:

  • 地下深くに浸透した水が地熱で温められる
  • 成分が安定している
  • 温度は中程度(〜50°C程度)

③断層型温泉:

  • 断層に沿って地下水が循環
  • 直線状に温泉が点在することが多い

断層と温泉成分の関係

特に断層は温泉成分に大きな影響を与えます。姶良カルデラ周縁の温泉の研究では、活断層に近い温泉ではヘリウム同位体比(3He/4He)が高い傾向が見られ、温泉水中のラドン濃度も断層付近で高くなる傾向が認められています。
これらの結果から、温泉成分は地質構造、特に断層に規制されて上昇し、断層の特徴を反映していることがわかります。つまり、その土地の地質構造が温泉の成分特性を決定づける重要な要素となっているのです。
温泉の成分組成を調査する際には、土地分類地質図や土壌図と源泉位置を示した図を重ね合わせることで、温泉地と地質の関係を明らかにする方法が用いられています。これにより、なぜ同じ温泉地内でも泉質が異なるのかを科学的に説明することができます。
例えば、同じ温泉地でありながら複数の泉質を持つ宮城県の遠刈田温泉や鳴子温泉では、源泉位置と成分組成の関係を分析することで、狭い範囲でも泉質が異なる理由が地質条件によって説明できます。

[2]温泉の泉質の違いと熱源の違いによる分類

温泉の泉質は、「熱源」の違い、すなわち温泉水がどのように加熱されるかによっても分類することもできます。熱源の違いは、温泉水の化学組成や温度、湧出形態にも大きく影響します。

1. 火山性温泉(マグマ熱源型)

  • 熱源
    火山の地下にあるマグマ溜まりや火山ガス(水蒸気、塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素など)によって加熱され温泉となる。

  • 特徴
    高温で湧出することが多く、酸性泉や硫黄泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉など多彩な泉質が生まれやすい。

  • 成分
    火山ガス成分(特に酸性成分)が溶け込むため、pHが低く、溶存成分が多い傾向がある。

  • 代表的な温泉地
    草津温泉、別府温泉、雲仙温泉など。

2. 非火山性温泉

ⅰ) 深層地下水型(地温勾配型)

  • 熱源
    火山活動と無関係で、地下深部へ浸透した地下水が地温勾配(地球の内部に向かうにつれ温度が上昇する現象)によって加熱される。

  • 特徴
    温度は中程度~低温。成分は周囲の地層や岩石に依存するものの、単純温泉や炭酸水素塩泉、硫酸塩泉などが多い。

  • 成分
    温泉水中の成分は、通過する地層の岩石成分に大きく影響される。

  • 代表的な温泉地
    下呂、鬼怒川など

ⅱ)化石海水型

  • 熱源
    地温勾配型と同様に地熱で加熱されるが、もともと海底堆積物に閉じ込められた海水が起源の場合がこの類型に該当する。

  • 特徴
    塩化物泉や含よう素泉など、海水由来の成分が特徴。

  • 代表的な温泉地
    秋保、指宿など
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