立山黒部アルペンルート
-富山県側から入る場合-
【1】立山ケーブルカー
①立山駅 → ②美女平
【2】立山高原バス
②美女平 → ③室堂
【3】立山トンネル電気バス
③室堂 → ④大観峰
【4】立山ロープウェイ
④大観峰 → ⑤黒部平
【5】黒部ケーブルカー
⑤黒部平 → ⑥黒部湖
|徒歩
⑥黒部湖 → ⑦黒部ダム
【6】関電トンネル電気バス
⑦黒部ダム → ⑧扇沢駅(長野県側)
【1】立山ケーブルカー
[立山駅→美女平駅]
立山ケーブルカーは、富山県の立山駅(標高475m)と美女平駅(標高977m)を結ぶ山岳ケーブルカーです。全長は約1.3km、駅間の標高差は502m、所要時間は約7分。1954年(昭和29年)に運行を開始し、立山黒部アルペンルートの富山側の玄関口を担っています。車両は2台がワイヤーで連結されており、つるべ式(交互運転方式)で運行されます。定員は120名です。
見どころ
-
ダイナミックな車窓の変化
低山帯の森林から山地帯の森林へ、標高差500mを一気に登ることで、車窓からは植生や景観の劇的な変化を楽しめます。 -
材木石(柱状節理)
途中、立山火山の溶岩が柱のようになった「材木石」が見られるポイントがあり、地質的にも興味深いスポットです。 -
美女平の原生林
終点の美女平は、樹齢200~300年のブナや1000年を超える立山杉の原生林が広がり、バードウォッチングや自然観察の名所としても知られています。
◎立山駅での過ごし方
立山の湧き水
駅舎の左側には、「熊王の水」という湧き水スポットがあります。夏でも冷たく、乾いた喉を潤してくれる名水スポットとして知られており、事前に空のペットボトルを用意してくことをおすすめします。
また、立山黒部アルペンルートの名水として特に有名な「立山玉殿の湧水」は、室堂平の室堂ターミナル広場にあります。こちらは日本名水百選にも選ばれた、清冽で軟らかな口当たりの名水です。ただし、残雪が残っている時期は閉鎖されているので要注意です。
おにぎりの志鷹
おにぎりの志鷹は、立山黒部アルペンルートの起点・立山駅前にある、地元で長年愛されているおにぎり専門店です。富山県産コシヒカリと立山の自然水を使用した「作りたてのおにぎり」が自慢です。
*団体による大量注文は事前連絡が無難です。
-
電話番号:076-482-1511
【2】立山高原バス
[美女平駅→室堂駅]
立山高原バスは、立山黒部アルペンルートの「美女平駅(標高977m)」と「室堂駅(標高2,450m)」を結ぶ高原バスです。全長約23km、標高差約1,500mを約50分かけて走行します。全員着席制で、バスはハイブリッドやクリーンディーゼルなどの環境に優しい車両が使われています。
見どころ
-
称名滝
日本最大級の落差(約350m)を持つ称名滝が車窓から見られます。バスは滝が見えるポイントで徐行し、解説アナウンスが流れます。 -
雪の大谷
春~初夏にかけては、高さ10mを超える雪の壁「雪の大谷」が道路脇に現れます。冬季閉鎖明けの時期限定の絶景です。 -
タテヤマスギの巨木
沿線には樹齢数百年のタテヤマスギ(立山杉)が点在し、車窓からその迫力を感じられます。 -
弥陀ヶ原湿原
標高1,930m付近にはラムサール条約登録の広大な湿原「弥陀ヶ原」があり、バス車窓や途中下車で自然景観を楽しめます。 -
雲海・山岳風景
天候が良ければ、富山平野や雲海、立山連峰の雄大な風景も望めます。
他のバスにはない特徴
-
全員着席制で快適
全席自由席ですが、この乗り物だけは必ず座って乗車でき長時間でも疲れにくい設計になっています。基本的に12列、正シート49人乗りの観光バスが来ます。 -
解説ビデオやアナウンス
車内モニターやアナウンスで見どころを案内してくれます。 -
自然景観の変化をダイナミックに体験
低山帯から高山帯へ、植生や景観が大きく変化する様子を体感できます。
◎室堂平の概要・見どころ
室堂平は標高2,450mに位置する高原エリアであり、立山黒部アルペンルート最大の見どころです。公共交通機関だけでアクセスできる日本屈指の山岳リゾートという点も特徴です。四季を通じて自然の変化が大きく、春の雪の壁「雪の大谷」、夏の高山植物、秋の紅葉、冬のスキーなど、季節ごとに多彩な魅力があります。
見どころ
-
雪の大谷
春から初夏にかけて、高さ20mにも及ぶ雪の壁が道路沿いに出現します。バスや徒歩で雪の回廊を体感でき、写真撮影スポットとして絶大な人気です。 -
みくりが池
「北アルプスで最も美しい火山湖」と称される紺碧の池。室堂ターミナルから徒歩7~8分、周遊コース(約40分~1時間)が整備。雪の大谷の季節は雪に覆われ、全く歩けないこともあるので要注意。ホテル立山の屋上から外に出ることができます。 -
立山室堂山荘
日本最古の山小屋で、国の重要文化財に指定されています。立山信仰の歴史や登山文化を感じられるスポットです。 -
高山植物・ライチョウ
初夏には高山植物が咲き誇り、運が良ければ国の特別天然記念物「ライチョウ」にも出会えます。
室堂駅での食事
室堂駅(室堂ターミナル)での食事はかなり限られたいるのが現状です。
-
レストラン立山
室堂ターミナル2階(ホテル立山3階)にあるアルペンルート最大規模のレストラン。富山湾の白海老から揚げ丼(2,100円)、氷見うどん、とやまポークカツカレーなど、地元食材を活かしたメニューが揃っています。営業時間は10:00~14:00(ラストオーダー13:30)、席数は450席。ただし、数多くの団体客の予約が入っており、注文してから料理提供まで時間がかかることが多い。クレジットカードや電子マネー利用可。 -
ティーラウンジりんどう
同じく2階にあるティーラウンジ。立山の名水で淹れたコーヒーや軽食を、絶景の窓側席で楽しめます。営業時間は9:30~16:00(ラストオーダー15:30)。いつも非常に空いているのでおすすめだが、お値段高め。 -
立山そば
1階の室堂駅構内に立席コーナーがあり、気軽にそばを食べられます。営業時間は8:30~16:00(ラストオーダー15:45)。値段は意外とお高め。
【3】立山トンネル電気バス
[室堂駅→大観峰駅]
立山トンネル電気バスは、2025年4月15日から運行を開始した、立山黒部アルペンルートの「室堂駅(標高2,450m)」と「大観峰駅(標高2,316m)」を結ぶ電気バスです。全長3.7km、標高差134m、所要時間約10分で、立山の主峰・雄山直下を貫くトンネル内を走行します。
この区間は、2024年11月30日まで「立山トンネルトロリーバス」が運行していましたが、部品調達難により廃止され、環境負荷低減と老朽化対策を目的に電気バスへとリニューアルされました。
見どころ
-
日本最高所を走る電気バス
標高2,450mの高地を走る、日本で最も高い場所を走行する電気バスです。 -
ラッピング車両のバリエーション
8台すべてが異なるラッピングデザインで、室堂平の「みくりが池」や四季折々の風景、アニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』とのコラボデザインなどが施されています。どの車両に乗れるかは当日のお楽しみです。 -
歴史と技術の継承
トロリーバス時代の「ヘッドマーク」を継承し、安全運転や歴史への思いがデザインにも込められています。
他のバスにはない特徴
-
最新のEV技術
230kWの高出力モーターと52.8kWhの大容量リチウムイオン電池を搭載。急勾配でも安定走行が可能です。停車中にパンタグラフを使って10分以内に満充電できる超急速充電システムも導入されています。 -
環境配慮
石油燃料を使わず、トンネル内に排ガスが発生しないため、自然環境保全に大きく貢献します。
◎大観峰駅
大観峰駅は標高2,316mの断崖絶壁に建っており、屋上以外には外に出ることはできません。その代わり、駅の屋上に高所からの絶景が楽しめる「大観峰雲上テラス」があります。断崖絶壁にせり出すように建つ大観峰駅の屋上は、アルペンルート屈指の絶景スポットとして知られています。
「大観峰雲上テラス」
「大観峰雲上テラス」は、立山黒部アルペンルート「大観峰駅」(標高2,316m)の屋上に設けられた展望テラスです。
[見どころ]
大観峰駅の屋上展望台「雲上テラス」からは壮大な景色が広がります。エメラルドグリーンに輝く黒部湖や、眼前にそびえる後立山連峰など、360度の大パノラマが広がります。
[行き方]
-
①駅舎に着いたら、屋上に出られる立山ロープウェイ降り場側の階段を上ります。
-
②階段を上がりきると、屋上に「大観峰雲上テラス」があります。
-
*屋上展望台から下りてきたら、次に乗る乗り物の乗り場を間違えないこと!!!
【4】立山ロープウェイ
[大観峰駅→黒部平駅]
立山ロープウェイは、立山黒部アルペンルートの「大観峰駅(標高2,316m)」と「黒部平駅(標高1,828m)」を結ぶ、全長1,710m・標高差約500mのロープウェイです。所要時間は約7分で、両駅間をワイヤーのみで結ぶ「ワンスパン方式」を採用しています。この方式は支柱がないため、360度の大パノラマが楽しめる「動く展望台」とも呼ばれています。
見どころ
-
360度の大パノラマ
支柱が一本もないため、黒部湖や後立山連峰、北アルプスの山々を遮るものなく一望できます。 -
黒部湖の絶景
眼下に広がる黒部湖を見ることができます。黒部湖は黒部ダム建設によって堰き止められた湖で、水力発電に用いられます。また、黒部ダムの観光放水も黒部湖の水が利用されます。 -
紅葉や雪景色
秋は鮮やかな紅葉、春先には残雪が美しく、季節ごとに異なる絶景を楽しめます。
黒部平駅での過ごし方
-
黒部平パノラマテラス
駅の屋上にある展望台「パノラマテラス」からは、立山連峰・後立山連峰の雄大な山並みを一望できます。四季折々の自然景観や、冬の雪景色も絶景です。 -
黒部平庭園
駅を降りてすぐの庭園エリア。
-
レストラン・売店利用
駅構内にはレストランや売店、そばコーナーもあり、食事やお土産探しも楽しめます。富山県の立山駅から入るルートの場合、ここを出るとゴールの扇沢駅まであと少しです。黒部ダムの付近にはお土産物がほとんどないため、立山黒部アルペンルートのお土産物を買うならここの土産物店を利用することをお勧めします。団体旅行の場合、ゴールの扇沢駅に着いたらトイレを済ませすぐホテルに向かうことが多いため、扇沢駅でお土産をゆっくり選んでいる時間はほとんどありません。
【5】黒部ケーブルカー
[黒部平駅→黒部湖駅]
黒部ケーブルカーは、立山黒部アルペンルートの「黒部平駅」と「黒部湖駅」を結ぶケーブルカーです。運行区間は約0.8km、標高差373m、最大勾配31度の急斜面を約5分で走行します。定員は130名で、昭和44年(1969年)に開業しました。
他のケーブルカーにはない特徴
-
全線地下式ケーブルカー
黒部ケーブルカーは、日本で唯一の「全線地下式ケーブルカー」です。自然保護と豪雪・雪崩対策のため、全線がトンネル内を走行します。そのため景色は一切見えません。 -
急勾配・スピード感
最大勾配31度の急斜面を一気に駆け下りるため、乗車時間はわずか5分。スピード感も魅力です。 -
歴史的価値
昭和44年開業と歴史あるケーブルカーで、開業当時は「黒部御前駅」と呼ばれていました。
◎黒部ダム(ダムの堰堤を徒歩移動)
[黒部湖駅→黒部ダム駅]
黒部ダムは、富山県と長野県の県境、黒部峡谷に位置する日本最大級のアーチ式コンクリートダムです。高さ186m、長さ492mで、建設には7年もの歳月と延べ1,000万人の人手が費やされました。最大出力335,000kWの水力発電所を備え、約240万世帯分の電力供給が可能です。ダム周辺は標高1,470m前後に位置し、北アルプスの大自然に囲まれた日本有数の観光地です。
季節ごとの見どころ
春~初夏
山々に残雪が残る幻想的な景色。観光放水はまだ行われていないものの、ダム湖と雪山のコントラストが美しい。
夏
観光放水(6月26日~10月15日頃)。毎秒約10~15トンの水が豪快に流れ落ちる大迫力の光景が楽しめる。緑豊かな山々と青い空、涼しい気候も魅力。晴れるとほぼ虹が見られます。
秋
紅葉と観光放水の共演。山頂の雪、中腹の紅葉、麓の緑が「三段紅葉」として広がる。湖面や山肌の色づきが美しい。
冬
豪雪と静寂に包まれた秘境の雰囲気。観光放水や遊覧船は運休し、観光施設も一部休業。
黒部ダムの歴史
背景
黒部ダム(黒部川第四発電所、通称「くろよん」)は、戦後の日本が直面した深刻な電力不足を解決するため、富山県東部の黒部川上流に建設されました。当時の関西地方は、産業復興とともに電力需要が急増し、慢性的な停電や電力不足が社会問題となっていました。このため、豊富な水量と大きな落差を持つ黒部川の水力発電が、関西電力の太田垣士郎社長によって「関西の消費電力を一気に賄える」と判断され、建設が決断されました。
建設資金の工面
黒部ダム建設資金の工面は、当時としては非常に困難かつ大胆なものでした。総工費は約513億円(当時)で、このうち約4分の1に相当する約133億円(3,700万ドル)は世界銀行からの借款によって賄われました。
建設の経緯と難工事
-
着工と困難
1956年(昭和31年)に着工。黒部峡谷は秘境中の秘境で、資材輸送や工事自体が命がけの作業でした。工事現場へのアクセスを確保するため、大町トンネル(現・関電トンネル)の掘削が始まりましたが、途中で大量の地下水が噴出する「破砕帯」に遭遇。7ヶ月にも及ぶ難工事の末、ようやくトンネルが貫通し、資材輸送が可能となりました。 -
ダム本体工事
1959年からコンクリートの打設が始まり、1960年に湛水(たんすい)開始、1961年に送電開始、1963年6月5日に完成しました。総工費は当時の金額で513億円、延べ1,000万人の人手と、171名の殉職者を出しました。 -
社会的意義
完成時には京都府の80%、大阪府の20%の電力需要を賄える25万kW(後に増強)を供給し、関西の産業発展と生活向上に大きく貢献しました。
建設の課題と反対
黒部ダムの建設地は国立公園内であり、景観保護や農業への影響、水害への懸念から、行政や地元住民による反対運動もありました。しかし、電力不足の深刻さと、黒部川の水力発電の重要性から、建設が推し進められました。
まとめ
黒部ダムは、戦後の深刻な電力不足を背景に、秘境の黒部峡谷で命がけの難工事を経て建設された日本最大級のアーチ式コンクリートダムです。多くの犠牲と困難を乗り越え、関西圏の電力安定供給と産業発展に大きく貢献しました。
【6】関電トンネル電気バス
[黒部ダム駅→扇沢駅]
関電トンネル電気バスは、長野県の扇沢駅(標高1,433m)と富山県の黒部ダム駅(標高1,470m)を結ぶ、全長約6.1km・標高差37mの電気バスです。所要時間は片道約16分で、黒部ダム建設時に資材運搬用として掘削された全長約6.1kmのトンネル内を走行します。2019年4月15日から運行を開始。それまで54年間運行していた「関電トンネルトロリーバス」の後継車両です。
概要
-
全線トンネル内走行
山岳地帯の自然環境を守るため、全線がトンネルの中を走ります。空気が澄み、静かな空間で山岳観光の雰囲気を味わえます。 -
歴史的破砕帯の通過
トンネル途中には、ダム建設時に大量の地下水が噴出した「破砕帯」があり、車窓から青い照明で照らされた区間を見ることができます。石原裕次郎主演の映画『黒部の太陽』で描かれた場所を通る、感慨深い場所です。 -
エコな乗り物
CO₂を排出しない電気バスで、環境にやさしい移動手段です。 -
車両デザイン
先代のトロバスからヘッドマークやデザインを継承し、車内には黒部ダムのマスコットキャラ「くろにょん」をモチーフにしたつり革も設置されています。